ハイレベル人間

バーゲンシーズンなので、意を決してお洋服を買いに行った。買い物苦手なのよ。

で、心を鬼にしながら、あるお店で服を物色していると、若い女子たちのグループがおり、そのうちの一人がワンピース2着を手にとても悩んでいる様子。まわりの者たちは口々にあれこれと言っている。「ためしに試着してみなよー」「えっ、でも…」とためらう女子に、「着てみなきゃわかんないし!」「そうだよ!○○ちゃんがそれ着たところ、私も見てみたいし!」

(ええっ!?見たいって言った、今?私は絶対見たくないけどなあ〜)と私はビックリ驚いたんだけど、ちょ!ちょっと待て、私。お前は本当に馬鹿者だよ!愚か者だよ!と思った。その女子たちだって、そいつがどのワンピース買おうが関係ないっていうか、さっさと決めてよ面倒くさい、くらいのことは思っているはずだよ。だのに「着たところを私も見たい(だから試着しなよ)」って、なんていう優しさなんだろうか。そういう心の機微がわからんのか!バカタレ私!と思った。

私、もう中年だけど、これまでの人生で一度だってそういう気配りをしたことないし、これからもできないと思うわ。だけど、この手の優しさをそうとは気づかずに普通に受け取っていたように思うよね、今振り返ると。(えっ、私のワンピース着たとこ見たい?マジで?くらいな感じでバカ面下げて試着してたと思うよ)

変な話になるけれど、そういう気遣いできる人っていうのは、人間としての経験値が高いんじゃないかと思う。つまり前世も、前前世も、その前も人間として生きていたんじゃないかな。スナックとかのママって、そういう感じ。経験値が高いので、他人の悩みも聞いてあげられる。一方の私は、まだ人間としてはせいぜい2回めくらい、人間になる前は何をしていたんだろうか、とにかくまだ自分のことで精一杯である。

「ていうか、お願いだから着て、見せて。どっちのワンピースがいいのか、もう気になって仕方ないから!」と、さっきの女子たちはさらにエスカレートし、私のようなペーペーには理解できないレベルに達していた。