コミディケーション

一人旅でお腹が案外繊細なので夕飯をどうするか、結構いつも悩む。ビールが飲めれば大体満足だから、焼いた肉と野菜がちょっとつまめればいいな、と思って街をプラプラしていたら、とても良さげな店があり、店先で肉がいい色に焼かれている。いいなー、うまそうだなー、と思っていたら横のテーブルの男性客が、食ってみろと自分たちのテーブルの皿を指差す。最初は、いやいやいいっす、と断っていたが、たしかにうまそうなので、お言葉に甘えた。肉はうまかった!キャベツやミントに挟んで食べる。タレもうまいし、最高。まぁ、飲みなよ。とビールまでご馳走になり、結局店が終わるまで居座ってしまった。

その人は現地の人で週末を利用して旅行に来ていた。(東京から箱根に行くような感覚ね。)言葉はあまり通じなかったが、互いに片言の英語で、お互いの英語のできなさをネタにして大笑いしながら飲んだ。10年も勉強してそれ!?と笑われ、俺は四年しか勉強してないけどこんだけ喋れるぜ、と言い、コミディケーションという言葉は知ってるか?と偉そうに聞いてくる。なにそれ知らない。コミュニケーションじゃなくて?いや、コミディケーションだ。えっ、ちょっと書いてみてよ。しかし、知らないスペルである。こんな単語ないよ!と反論すると、10年も勉強したのに知らないの!?と一通りバカにしながら、じゃあ聞いてみよう。と隣のテーブルの西洋人に声をかけようとする。やめなよ!私たち酔っ払ってるから、彼ら思うよ…(うぜーって英語でなんて言うんだろう、わかんないや)ファック、って!それは困るなアハハ…というようなやりとりを二度ほど繰り返し、ヘイ、コミディケーションって言葉の意味を俺たちに説明してくれ、と西洋人に頼んだらば、お互いにお話をする事よ。と、やはりそれはコミュニケーションなのであった。

いろいろご馳走になって、その後、旅行者で溢れかえるバーでまたご馳走になった。ものすごい盛り上がりで、トイレに行っている間にはぐれてしまった。だからちゃんとお礼が言えてない。