9月のこと

お母さんが死んでしまった。春に血液の病気が見つかり、それから入院している間に他にもいろいろな病気にかかり、治療を重ねていた。夏になると、もう治療は止めて家に帰りたいと言うようになった。ずいぶん痩せてしまったし、毎日点滴を続けた腕は細く、青くあざができていた。
私は子供の頃からどちらかというと母が苦手で、母も私のことは育てにくいと思っていたらしい。それでも、私が一人暮らしを始めて互いに距離ができてからはうまくいくようになったと思う。二人で旅行にも行った。母は、毎週末私に電話をくれた。関係がうまくいくようになった、といっても私の態度は素っ気なかったから、母は電話するのに毎回とても勇気が要ったそうだ。
その話を聞いたのは、退院した母の背中を拭いてあげている時で、ああ悪いことしたな、と思った。自宅療養は1週間ちょっとで終わってしまったけれど、その間は色々な話をした。だから、悲しいけれど、後悔はない。
自分が死んでもそのことでメソメソするなと言われたが、この先も、ささいなことを思い出しては泣いたりするんだと思う。ぴえん。