教習所 3日目

もう四十も半ばだが、車の免許を取ることにした。教習所通いの記録をつけることにする。


教習所3日目。はじめての実技。


今、教習所はめちゃくちゃ混んでいて、理由は春のコロナ休校のしわよせとキャンパスライフを楽しめていない学生さんが免許を取りに押し寄せている、ってことらしいが、入校して一週間目でようやく実技の予約が取れた。2コマ。

1コマ目は、教室でゲーセンの機械のような座席に座り、ハンドルの持ち方、アクセル、ブレーキ、サイドブレーキなんかを習った。私はこんなに長いこと生きていて、どっちがアクセルで、どっちがブレーキなのか知らず、それが密かなコンプレックス(時々夢で見る)だったので、それが解決されてよかった。教習所通いの目的の7割は達成した気がする。よし。それにしても運転というのはやることがいっぱいありすぎて、不安だ。

実技2コマ目。本物の車に乗った。

生まれて初めて運転席に乗った。遊園地のゴーカートだって絶対乗らなかった私だ、やだ怖い。

車という奴は隙あらば動こうとする。エンジンを入れて、左のレバーをDにして、サイドブレーキを下げると、しれーっと前へ動いていく。常にブレーキを踏んでいなければならないなんて知らなかった。あの人もこの人も運転中はブレーキを踏んでいたのか。親しい人たちの知らない一面を知ってしまった気分で、すこし落ち込んだ。

教習所のコースをぐるぐる周った。まったく感覚が掴めない。曲がる時、どのタイミングで減速して、ハンドルをどのくらい回せばいいのか。曲がったあとはハンドルをどのくらい戻せばよいのか。まっすぐ走れていないのはなぜ。などなど。アクセルを踏むのも恐ろしく、車の動きたがる性質を利用して運転した…。ベテランの女性教官は、加速したりブレーキかけたりは自転車と同じようなものだとアドバイスをくれたが、そもそも自転車運転も危ういことを思い出してしまって逆効果だった。

何も掴めないまま五十分の授業が終わった。本当に運転できるようになるのだろうか。